星の王子さまたちへ

星の王子さまたちへ

「・・・。」いつものように無言でお店に入ってくる二人の少女。
「こんにちは。」と声を掛けると、小さな声で「コンニチハ。」
赤いランドセルを肩からおろし、店内備え付けの茶器で勝手に自分達でお茶を淹れ、片隅の椅子にチョコンと座ってやっと嬉しそうにお茶を飲むふたり。

 三年前の秋、私は地元の小学校で嬉野茶についての話と淹れ方の指導を致しました。ふたりはその時の教え子です。 彼らの世界は子供ごころを忘れていた私にとって新鮮で刺激的でした。
「お茶は仏教のお勉強のために中国に渡ったお坊さんが…」と話すと
「なぜ中国でお勉強するんですか?」
「お金(生活費)はどうしていたんですか?」
「大切なお茶の種子を(都に全部持ち帰らずに)なぜこんなところに蒔いたのですか?」と矢継ぎ早に質問。
キラキラ輝く子供達の瞳が眩しく、私はさながら「星の王子さま」から質問責めにあう「ぼく」の心境でした。

 以来総合学習の中での取り組みは毎年続いており、時折街角で「とくながセンセーッ」と黄色い声を掛けられ赤面することもしばしば、と同時にほのぼのと幸せ気分に浸ったりもしています。
 孤食の時代といわれ少年犯罪が取り沙汰される昨今ですが、心優しい子供達は私の思いをしっかりと受け止めてくれているようです。
家庭の中で率先してお茶をいれ、「どがん?」「おいしか?」と家族の顔を覗き込む子供たち。
保護者が茶業関係者という家庭も多く、お茶に詳しい方から、「孫が、『お茶はそがんして淹るっとやなか』って言うとヨ。」と言われ冷や汗も…。「男の子なのにお茶を淹れて私達をねぎらってくれる。」と若いお母さんからの嬉しいメッセージ等々…。
 健康効果はもとよりコミュニケーションツールとしてのお茶の力をひとりでも多くの子供達が体感し、「お茶のある暮らし」を日々重ねるうちに「お茶なしでは過ごせない日本人」に育ってくれますように…。

小さなお茶会が静かに終わり、家路につく内気なふたりの後ろ姿に「またネ」と声を投げかけて、いつも私は思うのです。
あなたたちが大人になったらまた伝えてよね、未来の「星の王子さま」たちへ…。

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